アトピー性皮膚炎とは
- アトピー性皮膚炎は乾燥肌の体質を持つ人が、湿疹を繰り返す病気で、痒みを伴います。
- アレルギー性鼻炎、結膜炎や喘息などを合わせ持つことがあります。
- 悪化因子を除き、薬物治療と正しいスキンケアを行うことが大切です。
悪化因子の除去

(※1)パッチテスト
原因となる物質を薄めて皮膚にはり、2日後にはずして判定する検査法です。3日後の診察が必要になる場合もあります。判定は自宅でもできますが、判定が難しい場合があるので、受診して頂くことを勧めています
薬を使った治療方法
(1)塗り薬(ステロイド外用剤)
湿疹の赤みと痒みを抑える薬です。5段階の強さに分類され、皮膚の症状にあわせて適切な強さの薬を選びます。慣れてくれば、自分でもどの強さの薬を付ければよいかがわかってきます。
(2)飲み薬(抗アレルギー剤)
痒みを抑える飲み薬です。寝ている間、お風呂上がりなど、その方によって痒みが強い時間があります。掻いてしまうと湿疹が悪化してしまうので、内服薬と外用薬を併用することがあります。この飲み薬の主な副作用は眠気です。眠気の程度は薬の種類により異なり、また個人差もあります。そのため、車の運転は注意や制限が必要ですが、眠気の少ない薬もあります。いくつか種類がございますので、医師にご相談ください。
(3)ステロイド外用剤の副作用
1ヵ月程度ぬっても副作用は出ませんが、長期間継続すると、皮膚が薄くなる、皮膚の細い血管が広がり赤くみえる、毛が濃くなる、ニキビができやすくなるなどの副作用が出る場合があります。
(4)ステロイド外用剤の間違った副作用情報
肌が黒くなるという人がいますが、これは元々の湿疹が治った後に生じる色素沈着で(特に湿疹を長く放置した場合に色が残りやすい傾向にあります)、ステロイド外用剤が原因で生じたわけではありません。ステロイドはむしろ肌の色を白くします。また、ステロイド外用剤では副腎抑制、高血圧、糖尿病といったステロイド内服薬(飲み薬)の副作用はみられません。

(5)ステロイド外用剤の副作用を少なくするには
顔や陰部の皮膚は薄く副作用が生じやすいので、あらかじめ弱めの薬を使用します。症状がひどいときは、強めの薬を使い、良くなれば弱い薬に変更する必要があります。最初は1,2種類のぬり薬を使いますが、慣れてきたら数種類のぬり薬を使い分けて頂くことになります。また、赤ら顔の治療などにはプロトピック軟膏(後述)も併用します。定期的に受診して頂き、適切に使用して頂ければ、副作用は限定的なものになります。
プロトピック軟膏は、ステロイドとは異なる機序で湿疹の赤みと痒みを抑える薬です(非ステロイド外用剤)。これはステロイドのように皮膚が薄くなるという副作用はありませんが、ニキビがステロイド外用剤より出来やすい、塗り始めは刺激感があるなどの注意点があります。また皮膚への浸透力は弱いので、顔や首以外には効果が少ない印象です。この軟膏は小児用も発売されています。もう1つアトピーの非ステロイド外用剤に、コレクチム軟膏がありますが、こちらは刺激が少ない反面、効果も弱い印象です。

(6)その他
ぬり薬によりニキビが出来やすくなった場合は、ニキビを抑える抗生剤(化膿止め)を使用します。漢方薬やビタミン剤を希望される場合は相談下さい。アレルギーを抑える注射をして頂く場合もあります。
日常のスキンケア
乾燥肌をひどくしないようにすることが目的です。長風呂、風呂でゴシゴシこする、プール、電気毛布、床暖房などは乾燥肌を悪化させます。
保湿剤(ヒルドイドソフトやローションなど)を風呂上がりにぬると効果的です。女性の場合、顔にも化粧品※2の保湿クリームをつけるようにします。痒みを伴う場合は保湿剤では改善しないので、弱いステロイド外用剤を組み合わせることが必要です。

(※2)化粧品
顔の湿疹がひどい時はポイントメイクを勧めますが、それ以外はご自分にあった化粧品であれば、化粧をしていただいても構いません。自分に合う化(粧品がわからない場合は、診察時にご相談下さい。
当院では副作用を出さない工夫をしながら、ステロイド外用剤を主体とした治療をアトピー性皮膚炎に対し行っています。どうしてもステロイド外用剤の使用に抵抗感がある場合は診察時にお知らせ下さい。相談しながら、治療方針を決めていきましょう。