じんま疹の新しい薬:ゾレア(オマリズマブ)
じんま疹の原因は何?
食べ物が原因では?と思う方が多いのですが、調べると図のように食べ物が原因のアレルギー性じんま疹は全体の5%ぐらいで、7割以上は特発性(とくはつせい)じんま疹といって、原因が特定出来ないタイプです。
ゾレアは喘息の薬としてすでに使われていますが、今回、この原因が特定できない特発性じんま疹にも使用できるようになりました。
じんま疹の治療法は?
しかし特発性じんま疹の治療方法は右のようなガイドラインで明確に決まっていて、多くの人は飲み薬で良くなります。
- まず眠気の少ない第二世代の抗ヒスタミン剤を使用します。
- 2週間ほど使用してもじんま疹が残るときは以下の方法を行います。
- 抗ヒスタミン剤の増量や他の抗ヒスタミン剤の併用
- 補助的治療薬の追加
- それでも効果が少ない場合はプレドニゾロンを短期間併用します。(※右側の国際ガイドラインにある抗ヒスタミン剤の4倍量投与とシクロスポリンは日本の保健診療ではまだ認められていません)
では、上記の1〜3でもじんま疹が治まらない時は?
既存の薬で治らない時(国際ガイドラインの第3段階)のゾレアⓇ(オマリズマブ)がようやく日本でも使用出来るようになりました。
ゾレア(オマリズマブ)とは?
ゾレアはIgEに結合する抗体製剤です。抗体とは我々の体に入ってくる病原体や異物(抗原といいます)に結合して、これらを除去してくれるタンパク質、IgEとはマスト細胞に結合して、じんま疹を誘発するヒスタミンなどを放出させます(図)。
ゾレアはマスト細胞に結合するIgEを減らすことでじんま疹を抑えます。
しかし、特発性じんま疹ではそれほど血液中のIgEは多くありません。本当に効果があるのでしょうか?
ゾレアの使い方
ゾレアは飲み薬ではなく、月1回だけ皮膚に注射する薬です。自己投与はまだ認可されていないので、医院に来て頂いて医師が注射します。また、家ではこれまで服用していた抗ヒスタミン剤を併用します。
ゾレアの効果
①ゾレアが効く人の割合は?
この試験ではゾレアを6回注射し、その1ヵ月後の効果を調べています。実際には300mgが適正使用量に決まったので青と黒を比較して下さい。じんま疹がほとんど気にならなくなった人の割合はゾレア半年の使用で52%(左図)、完全に消失した人の割合は35%(右図)でした。
他の論文も調べると(下の表の赤枠)、効いた人の割合は概ね50〜60%ぐらいです。
②ゾレア中止後の変化
ゾレアで効果が出る人は予測できるか?
せっかく高い薬を使っても効果が余り出ないと困るので、予め効く人と効かない人に分けられればいいですよね。
しかし現在色々と調べられていますが、まだ簡単に事前にわかる検査項目はないようです。
ゾレアの副作用は?
主な副作用は注射部位の赤みや腫れです。この他に国内でじんま疹に対する臨床試験を144人に行ったところ、頭痛が3例と鼻咽頭炎が2例に認められました。薬の添付文章では重大な副作用としてアナフィラキシーショックがあげられているので、注射後はしばらく院内で様子をみせてもらいます。
ゾレアの価格は?
最大のネックは薬剤費です。どうしてこんなに高額なのでしょう?
3割負担の方で1回27,347円です(1割負担で9,116円)。
まとめ
2〜3種類の抗ヒスタミン剤や補助的治療薬を使用してもじんま疹が治まらない場合、これまではステロイドを飲むことでかゆみを抑えていました。しかし、ステロイドを長期に使用すると、糖尿病、高血圧、骨粗鬆症、感染症などの副作用が心配です。結局、1)少量のステロイドを使っていても効果が少ない、2)ステロイドの長期使用で副作用が心配、3)他の内臓疾患のためにステロイドが使えない、という時にゾレアを使うことになりそうです。