オルミエントよる円形脱毛症治療
オルミエントという飲み薬が、脱毛部位が広範囲におよび難治の円形脱毛症に認可され、当院でもこの薬による治療が可能になりました。
オルミエントは色々な副作用が知られている薬のため、治療前に採血などの検査が必要です。そのため、初回の受診日から治療を開始することはできません。また、メール相談等で、オルミエントが使用できるかの判断もできかねますので、ご希望の場合は診察に来て頂ければ幸いです。
〈オルミエントの効果と副作用〉
すでにアトピー性皮膚炎、関節リウマチ、コロナウイルス感染症の治療にも認可されている免疫を抑える薬です。
この薬の画期的な点は発病して数年経過した人にも効果を認めていることです。
論文を読むと、平均4年間治っていない円形脱毛症の方が治療を受けています。この試験は頭髪の半分以上が抜けている18〜60才(女性は70才まで)の1200人を3つの群(オルミエント4mg、2mg、偽薬)に分けて治療をしています(参加した半分は頭髪がほとんど抜けている人)。
その結果、下図のように36週目にはオルミエント4mg群で脱毛面積が頭髪全体の20%以下になった人の割合が35.9%と偽薬の3.3%に比べて大幅に改善しています。まゆ毛やまつ毛の脱毛に対しても同じような効果がありました。ただし、効果に差が出るのは12週目以降で、すぐに効果が出るわけではありません。
(図の説明)オルミエント4mgを服用した群(赤線)は偽薬を服用した群(灰色)に比べて有意に発毛が見られている。図Aと図Bはほぼ同じ試験内容で参加者は別の人です。図Bには日本人41人が含まれています。 N ENGL J MED:386,1687, 2022
副作用は免疫を抑える薬のため感染症に注意する必要があります。
感染症とは上気道炎、尿路感染、コロナやインフルエンザなどのウイルス感染、帯状疱疹、単純疱疹、毛のう炎、外陰部カンジダ症などです。その他の副作用は診察時のお渡しするパンフレットをご覧下さい。
免疫を抑える薬は沢山ありますが、その中でなぜオルミエントが円形脱毛症に効果があるのかはまだよくわかっていません。
円形脱毛症は免疫細胞が誤って毛根を攻撃するために毛が抜ける病気で、その攻撃にはインターフェロンガンマ(IFNγ)やインターロイキン15(IL-15)という物質が関係していると考えられています。オルミエントは細胞内に入りIFNγやIL-15が作るのを抑える作用があるため円形脱毛に効果が出る可能性が推察されています。