アトピー性皮膚炎の新しい治療法 デュピクセント

抗体医薬品は病気の原因物質をピンポイントで狙い撃ちすることで、高い効果と副作用の軽減を同時に期待できる薬です。

アトピー性皮膚炎で使用する抗体医薬品は「デュピクセント」。狙い撃ちにするのはIL-4受容体(インターロイキン4受容体)です。このIL-4受容体がブロックされると、下図のようにIL-4とIL-13が受容体と結合できなくなり、細胞の中に刺激が伝わらなくなります。

 

 

 

 

IL-4やIL-13はアトピーでみられる皮膚の赤み(炎症)やかゆみを引き起こし、バリア機能を低下させる物質です。ステロイド軟膏や紫外線治療など既存のアトピー治療も同じように炎症やかゆみを改善させますが、「デュピクセント」はピンポイントでこれらを抑えるため高濃度で投与しやすく、そのためより強力にこれらの作用を抑えることができます。

 

「デュピクセント」は2週間に1度、皮膚に注射する薬です。ぬり薬のように全身に薬をぬる手間がありませんし、慣れれば自分自身で注射できるので、頻回な通院も不要です。

 

実際の効果は以下の通りです

ステロイド軟膏で改善が乏しかったアトピーの方を、A)デュピクセント使用群(106人)とB)偽薬群(315人)に分けて1年間観察しています。いずれもステロイド軟膏は使用しています。

その結果、アトピーの重症度を表すEASIスコアの改善が投与2週間目からみられ、16週目には平均80.1%改善しました。偽薬群では48.6%改善しただけでした。

院長の個人的見解ですが、偽薬群でも結構改善している印象です。ステロイド軟膏だけでも決められた通りに通院し、しっかり使用すればアトピーは良くなるということです。ただし、そこまでがんばってもデュピクセント群にはかないません。デュピクセントの平均80.1%の改善は、ぬり薬だけでは到達しない改善率だと思われます。

また、実際に皮疹がほぼ無くなる人の割合はデュピクセント群で38.7%、偽薬群で12.4%です。

 

 

これに対し主な副作用は注射部位の痛みや発赤、頭痛、アレルギー性結膜炎でした。

結膜炎はデュピクセントの副作用として17.9%と高率に見られています。アトピーの人は軽い結膜炎を持つ人が多いので、これがデュピクセント投与で悪化する場合もあるようです。私の経験では点眼薬で改善し、デュピクセントを継続できる場合が多いように思います。

一方、デュピクセントは免疫の一部を抑える薬なので重度の感染症が発症しやすいのではと当初危惧されていました。しかし逆に偽薬群の方がより多くの細菌感染症やヘルペスウイルス感染症が見られたという結果でした。これはデュピクセントにより皮膚のバリア機能が改善したため、感染症にかかりにくくなったためと思われます。

「デュピクセント」は効果も高く、安全性も許容範囲内ですが、残念なことに薬剤費が高額です。

高額療養費制度(詳細は協会けんぽのページを参照下さい)を利用することが多いのですが、それでも3ヶ月に1度80,100円の自己負担が必要です。ただし、この制度の利用月より前の1年間に3回以上利用した場合、4回目以降は44,400円に減額されます。幸いなことに、保険診療ですので片親など医療費の自己負担のない方は無料でこの治療を受けることができます。なお、これらの自己負担額は利用する人の年齢、所得や職業でも異なるため詳細は診察時にお話します。

 

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