重症熱性血小板減少症症候群

皮ふ科の学会が福井であり、能登の先生が北陸で初めて確認された新しい感染症を発表していました。

重症熱性血小板減少症候群というウイルスが原因の病気で、マダニに咬まれることで感染します。

マダニは森林や草地などの屋外に生息しているため、キャンプに行って咬まれたと白崎医院にも時々受診される方がいます。通常はマダニを切除して抗生剤を飲めばそれ以上のことは起こりませんが、たまたまこのウイルスを持つマダニにかまれた場合は熱が出て、死に至ることもあるそうです。恐ろしいですね。

マダニとは

ダニと聞くと、家にいるダニを思うかもしれませんが、マダニは違う生き物と思った方がいいでしょう。家にいるダニはヒョウヒダニやコナダニでアレルギーを起こしますが、人を刺すことはありません。また大きさも家にいるダニは目に見えないぐらいの生き物(0.2〜0.5mm大)ですが、マダニは小さなてんとう虫ぐらいの大きさ(3〜8mm)です。

longicornis01マダニは動物やヒトの血液が唯一の栄養源で、草の葉の先に隠れていて吸血できる動物が通るのを待っています。一旦かみつくと、満腹になるまで1週間ほど吸血します。

かまれても痛みもかゆみもないため、通常はすぐには気付かず、数日してマダニの体が血液で赤黒くなってきて初めて何かあると認識します。それでもマダニとわからず、「いつの間にか変なカサブタができた」と受診される方もしばしばです。

1週間もかんだままでいるために、マダニはだ液からセメント様物質を出して皮膚と硬く結合しています。そのため、マダニを引っ張って取ろうとしても簡単には取れません。無理に取っても口の部分が残りますし、不用意につぶすとマダニが持つ病原体が体の中に入る危険があるため絶対にやめて下さい。

マダニを自分で除去するために、マダニリムーバーを使う、アルコールやワセリンでマダニを窒息させるなどと書いてあるサイトもありますが、かまれてすぐならまだしも、1日以上経っている場合はやめた方が無難です。切除することが確実で唯一の方法です。

重症熱性血小板減少症候群(severe fever with thrombocytopenia syndrome: SFTS)とは

マダニが媒介する新しいウイルス感染症で、2009年頃中国で初めて患者さんが発症しています。

日本では2012年の秋に初めてこの病気の患者さんが確認されています。

SFTS発症地このウイルスは全国各地のマダニの一部で見つかっていますが、実際に病気になった人は西日本が中心です。今回石川県で初めて見つかりましたが、これまでの報告の中では最も北の地域です。

理由はわかっていませんが、この病気の患者さんの95%以上は50才以上の高齢者です。

マダニにかまれてから6〜14日後に、発熱や消化器症状(食欲低下、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛)が出現します。時に頭痛、筋肉痛、神経症状(意識障害、けいれん、昏睡)を認めることもあります。

スクリーンショット 2015-12-16 08.26.52まだ特効薬がないため、治療は対症療法のみです。急速に症状が悪化することがあり、死亡率が35%と高率なのが問題です。

今回、福井で発表された方は、うでにかまれたマダニを自分でむしり取った5日後に熱が出たために近くの開業医を受診されています。すぐに大きな病院に転院されましたが、残念ながら転院9日目に亡くなられています。

マダニにかまれないようにするためには

対症療法しかなく死亡率が高いこの病気への対策はマダニにかまれないようにすることです。
野外に出るときは、肌をなるべく露出しない、ディート(虫除けスプレー)を使うなどが必要で、このページに詳しく書かれています。
虫除けスプレーには医薬品と医薬部外品があり、医薬品の方がディート濃度が12%と濃いためお勧めです。

参考サイト:国立感染症研究所

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