ステロイド外用剤 〜炎症の程度や発現部位で使い分けています〜

1)ステロイド外用剤とは

湿疹や皮膚炎を始めとする種々の皮膚疾患の赤みやかゆみを抑える「抗炎症作用」を持つぬり薬です。70年前から使われていて、未知の副作用がないこと、軟膏・クリーム・ローション・テープ剤など色々な剤形があることが特徴です。

2)ステロイド外用剤の種類

写真は当院で主に使っているステロイド外用剤です。
炎症の程度や発現部位、年齢などにより強いものから弱いものまでを使い分けています。複数箇所に病気がある場合は複数のランクのステロイド外用剤をお出しすることもしばしばです。

 

 

 

 

 

 

 

◎ステロイド外用剤の吸収率

下図のように使用部位によりステロイドの吸収が異なります。吸収の良い顔や陰部は弱いランクのステロイド外用剤でも薬が良く吸収されるため十分に効果を発揮します。逆にこのような部位に強い薬を使うと副作用が出現しやすくなります。

 

 

 

 

 

 

 

 

◎ステロイド外用剤の剤形

軟膏・クリーム・ローション・テープ・シャンプーなど色々な剤形があることも特徴です。
1)軟膏:べたつく感じがありますが、どのような皮膚の状態でも使うことができます。当院で最も良く使用している剤形です。ワセリンや保湿剤などと混合することで量を増やし塗りやすくする場合もあります。

2)クリーム:軟膏よりのびがよく、べたつかないですが、軟膏より刺激がありジュクジュクした所には使えません。ただし、軟膏がべたべたしてぬりにくいなら、クリームを使う方が良いと思います。

3)ローション:サラサラで流れやすいため頭の中の病気や爪に良く使っています。

4)テープ:硬いシコリやケロイドなどは単純にぬるだけでは改善が乏しいため、テープ剤を使ってステロイドの吸収を高めます。元々軟膏をつけた後にサランラップをを使ってぬり薬の吸収を高めていましたが、テープ剤の方が便利です。テープ剤にはドレニゾンテープとエクラープラスターの2つあり、後者の方が強いステロイドが含有されています。

5)シャンプー:コムクロシャンプーは最強のステロイド外用剤が含まれるシャンプーです(洗い流すために最強でも大丈夫です)。通常のシャンプーと異なり、洗ったあと15分間待ってもらい洗い流す必要があります。少し時間がかかりますが、頭全体に均一に薬が行き渡るメリットもあります。

3)ステロイド外用剤の副作用

主な副作用は以下です。

以下の副作用を知った上で、必要な時にはきちんとステロイドを使用し、漫然とは使用せず、良くなった後はステロイド以外の薬や治療法に切り替えていくのが肝要です。

塗った部分にあらわれる

・皮膚萎縮
・毛細血管拡張(特に顔に起きやすい)
・酒さ様皮膚炎、口囲皮膚炎、ステロイド紅潮
・乾皮症、多毛、色素脱出、創傷治癒遅延
・感染症の誘発、悪化(毛のう炎、体部白癪、単純ヘルペスなど)
・緑内障(目に軟膏が入る場合)

 

4)ステロイド外用剤の副作用への誤解

その1:ステロイドの飲み薬や注射の副作用と混同している

糖尿病や高血圧、骨粗鬆症、胃潰瘍、満月様顔貌(ムーンフェイス)、肥満といった全身の病気や容姿に関係するものはステロイドの飲み薬や注射を長期に使った時の副作用です。また、全身の免疫力の低下や感染症にかかりやすくなるのも同様です。これらの副作用がステロイド外用剤で起こるとは考えにくいものです。

その2:ステロイドをぬると皮膚の色が黒くなる

別のブログにまとめてあるのでご覧下さい。

その3:副作用を恐れる余りステロイドを使わないデメリットに気づいていない

ステロイド外用剤の副作用は、副作用を理解し医師の管理の下で適切に使用していればそれ程恐れるものではありません。逆にステロイドを使わないで治そうとすると、完治せずに色素沈着が残ったり、小児の場合アレルギーが増えたりなどのデメリットも存在します。使うのがご不安な場合は診察時にご相談下さい。