アトピー性皮膚炎でみられる首の色素沈着
アトピー性皮膚炎の皮膚症状がひどかった方で首の色素沈着がなかなか改善しないことがあります。
専門用語では炎症後色素沈着といいますが、皮膚科の教科書では、炎症後色素沈着は時間が経つと自然に色が消える病気と書いてあります。ではどうしてアトピー性皮膚炎の場合は長く続くのでしょうか。
炎症というのは皮膚が赤くなる状態のことです。この赤い状態がしばらく続くと治った後に必ず色素沈着が残ります。例えばヤケドした後に色素沈着が生じた記憶はないですか? しかし半年とか1年とか時間が経てばヤケド後の色素沈着は薄くなったはずです。ヤケドは1回だけしか炎症が生じない病気だからです。
アトピー性皮膚炎はどうでしょうか。元々軽微な刺激で炎症が生じる敏感な肌を持つのに加え、首は、汗、洋服や髪の毛でこすれる刺激を常に受け、紫外線にも当たる場所であるため、改善するのが難しくなるのです。
以上をふまえて首の色素沈着をより効率よく治す方法を説明します。
1)まずは極力首への刺激を減らすのが大切です。洋服や髪の毛は当たらないようにして下さい。汗をかいた時はなるべく早くシャワーを浴びましょう。また、ご自分に合った日焼け止めも使用して下さい。
2)それでも炎症が残る場合は、ステロイド外用剤でしっかりと炎症を抑えます。
3)それと同時に保湿剤をつけて、皮膚のうるおいを保つようにします。
4)以上を行い、しばらく様子をみても色素沈着が残る場合はビタミン導入やレーザー治療を併用します。
ビタミン導入は当院ではエレクトロポレーション法を用いているので、これまでより格段に多くのビタミンを皮膚の中に導入することが出来るようになりました。ビタミン導入は効果が出るまでに回数がかかりますが、肌質が改善し、肌荒れしにくくなるメリットもあります。
レーザー治療はビタミン導入より早く結果を出したい方に向いています。ただし、照射後はしばらくカサブタが付きますし、人によっては色が白く抜けすぎる場合もあります。
首の色素沈着は我々皮膚科医にとってもやっかいな病気の1つです。あせらず慌てず、時間をかけてゆっくりときれいにしていきましょう。気になる場合は診察時にご相談下さい。