AGAの新しい飲み薬は2016/6/13に発売になります。

AGAとは

男性型脱毛症（Androgenic alopecia、AGA）のことです。右図のように頭のてっぺんと前の毛が年齢とともに徐々に細く少なくなります。

AGAの進行パターン

進行パターンは様々で、額の生え際から後退していくタイプ、頭頂部から薄くなるタイプ、これらの混合タイプなどがあります。

AGAの原因

AGAの脱毛部にはDHT（ジヒドロテストステロン）が高濃度に見られ、これが毛の成長期を短くしています。成長期が短くなることで、髪の毛が長く太く成長する前に抜けてしまいます。

DHTは毛の根元にある「５α-還元酵素」という酵素の働きで「テストステロン（男性ホルモン）」から作られます。また、DHTは「アンドロゲン受容体」に結合して毛の成長をおさえる物質を増やします。

AGAには遺伝も関係しています。実際、本人以外に父や祖父、おじなど家族の他の人にもAGAがよくみられます。しかし、どの遺伝子が原因かはまだ特定されていません。例えばDHTが結合する「アンドロゲン受容体」の遺伝子に個人差がありAGAのなりやすさと関係すると言われていますが、他の遺伝子の関与も指摘されていて、どうも複数の遺伝子が関わっているようです。

AGAの治療

１日１回の飲み薬で治療します。これまではプロペシアしかありませんでしたが、ザガーロという新しい薬が登場しました。

いずれの薬も「５α-還元酵素」をブロックすることでDHTの量を減らします。ブロックする「５α-還元酵素」はプロペシアが２型のみを、ザガーロが１型と２型の両方です。

「５α-還元酵素」には１型と２型があり、少し違う場所で働いています。２型は頭髪の中でもAGAが生じる頭頂部と前頭部、ヒゲ、前立腺に、１型は２型が見られる場所に加え、頭髪全体、腎臓、副腎、肝臓などにも広く分布しています。

ザガーロの効果について

（プロペシアについては別のブログをご覧下さい）

国際共同試験の結果です。20〜50歳のAGA917人（アジア人が半数以上で日本人200人含む）をプラセボ（偽薬）、フィナステリド（プロペシア）、ザガーロを飲む人に分けて、服用半年後の毛髪数を比較したものです。

その結果、今回発売になるザガーロ 0.5mgは既存のプロペシアを上回る効果がありそうです。頭頂部の直径2.54cm（500円玉大）の円形内に増えた毛の数はプロペシアが平均56本、ザガーロが90本で、ザガーロの方が統計学的に有意に増えていました。

この試験が記載されている論文を読むと頭の写真を投与前と投与半年後に比較した評価も行っていて、右図のようにプロペシアでは効果が出にくかった前頭部もザガーロでは発毛がしっかりみられるようです。　（J Am Acad Dermatol 70, 489, 2014）

これまでAGAには主に２型の「５α-還元酵素」が関わっていると考えられてきました。２型が主にAGAが起きやすい前頭部や頭頂部に主にみられること、２型をブロックするプロペシアがAGAに効果があるからです。今回、１型と２型をおさえるザガーロの方が良く効いたという結果からは、１型もAGAの発症に関係している可能性があります。

ただ、他にもザガーロの方が、２型「５α-還元酵素」をより阻害する（50％阻害濃度：0.05nM vs 0.16nM）、あるいは薬がより長く体内に残っている（反復投与後の半減期：3.4週 vs 4.1時間）など、プロペシアとの違いもみられているので、これらのことが発毛の増加に関係しているのかもしれません。

実際の効果はこちら

ザガーロの副作用

上記の国際共同試験でみられた主な副作用のまとめです。
プラセボ（偽薬）と比較してザガーロで多く見られたのはリビドー減退（性欲の減退）と精液量減少です。勃起不全もみられていますが、これはプラセボでも一定数存在するため精神的な問題も含まれているのかも知れません。

国内で１年間ザガーロ0.5mgを内服したAGA120人でみられた副作用でも多かったのは勃起不全13例(10.8%)、リビドー減退10例(8.3%)、射精障害５例(4.2%)でした。

一方プロペシアに関しては、１年間服用したAGA276人中、リビドー減退３(1.1%)、勃起機能不全２例(0.7%)の副作用がみられたという国内での結果があります（詳細は添付文章参照下さい）。統計学的に差があるかはわかりませんが、数字からだけみるとザガーロの方が副作用が多いのかもしれません。

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