陰部・外陰部の皮膚病
独りで悩まないで!
病気の部位をみせることに抵抗を感じる場所ですが、早く改善させるには正しい診断が不可欠です。診察は短時間の視診と検査(5分程で結果がわかる真菌検査や細胞診で、必要時のみ)を行います。ネットで調べた知識をもとに市販薬を使うだけでは治りにくい場所でもあります。
白崎医院は
- 同性医師が診察するように配慮しています。
- 子供からお年寄りまでいろいろな皮膚病が理由で受診されているので、来院されても陰部・外陰部の診察と思われることはありません。
陰部・外陰部のかゆみ、赤み:考えられる疾患と症状
1)皮膚炎、湿疹
- 陰のう、陰茎、陰毛が生えている部位、太ももの内側、肛門周囲、お尻と、陰部・外陰部のどこにでも認めます。
- 汗で蒸れたり、皮脂の刺激、尿や便の汚染が原因です。
- 最初は薄赤い程度ですが、時間が経つと皮ふが厚くなり、かゆみもひどくなります。
- 感染性ではないので、清潔を保てばいいのですが、一度出来た変化は薬で改善させないと自然には良くなりません。
- 病気の程度に合わせた適切な強さのステロイド外用剤で治療します。
- 外陰部は皮ふが薄くステロイド外用剤の副作用が出やすい場所なので、繰り返しの使用には注意が必要です。
2)股部白癬(こぶはくせん、インキンタムシ)
- 太もも内側の付け根が赤くカサカサし、かゆみを伴います。
- 蒸れやすい股(また)に足の水虫が感染して生じることがほとんどです。
- 水虫菌を殺すぬり薬で治療します。
- 範囲が広い場合は飲み薬を数ヶ月服用してもらう場合もあります。
- 足に水虫がある場合は、同時に治療することが肝要です。
※ 1)の皮膚炎と2)の白癬は同じように見えることが多く、早く治すためには常に真菌検査が必要です。
3)亀頭包皮炎
- 亀頭部やその付け根の包皮が赤くなり、白い湿ったフケのようなものが付着します。
- 原因で多いのは、皮脂やこすれによる刺激とカンジダという真菌の感染です。
- 両者の違いは、患部をこすった物を顕微鏡で調べると分かる場合があります。
- 刺激の場合はステロイド外用剤を、カンジダの場合は抗真菌剤を用いて治療します。
- ステロイド外用剤は継続すると、赤みの出現やカンジダの誘発などの副作用があるため定期的な診察が必要です。
- いずれの場合も湿った状態が続くと治りにくいため、包皮を反転させるなどして乾かすようにして下さい。
4)かゆみはあるが、皮膚が正常にみえる場合
陰部にかゆみがあっても、見た目は普通の状態にみえる場合があります。 わずかな皮膚炎がありかゆみを伴うことが多いですが、カンジダや稀に乳房外パジェット病というガンの初期ということもあるので注意が必要です。
陰部・外陰部のかゆみ、赤み:よくあるご質問
Q 真菌検査とはどんな検査ですか?
皮ふが荒れてくるとフケのようなものが付着してきます。このフケをピンセットで取り顕微鏡で見るとカビがいるかがわかります。目で見ただけではカビがいるかどうかわからないことがあるため、正しい診断には必要な検査です。
Q 細胞診とはどんな検査ですか?
ヘルペス感染症を疑った時に行います。水ぶくれやカサブタを取り内容物をプレパラートに付けギムザ液で5分程染色します。普通の白血球(好中球やリンパ球)に比べて大きい巨細胞が顕微鏡で見られた場合はヘルペス感染症と診断ができます。
Q 陰部の病気が繰り返すのですか、何か良い方法はありませんか?
タムシやヘルペスなどの感染症の場合は薬の使用で再発しにくくなります。皮膚炎の場合は状況により異なりますから、診察医にご相談ください。
Q ステロイド外用剤を陰部に使う時の注意点はありますか?
短期の使用では特に副作用はありません。しかし、長く続けると陰部は他の部位より皮ふが薄いため、ぬっていた部分の①皮ふがより薄くなる、②血管が広がり赤みが目立つようになる、の副作用が出る場合があります。繰り返すのが心配だからといって、症状が治まった後に長く薬を続けないようにして下さい。
陰部・外陰部の痛み、赤み:考えられる疾患と症状
1)性器ヘルペス
- 単純ヘルペスウイルスによる感染症です。赤みと小さい水ぶくれが特徴で痛みを伴います。
- この病気の最大の特徴は放置しても10〜14日ほどで自然に良くなることと、再発を繰り返すことです。
- 自然に良くなるため治療を受けない人が多いのですが、そうすると再発時の不快な症状に悩まされ、パートナーに感染させるリスクが高まります。
- 再発する理由はこのウイルスが症状が治まった後でも神経の奥の方(神経節)に潜むからです(図)。
- 疲れ、体調不良、ストレス、生理、性交などが誘因となり再発します。特に誘因なく再発する場合もみられます
- 症状が出ていない時も皮ふからウイルスが排出されているため、繰り返す場合は再発抑制療法※が必要です。
- 皮ふに症状が出た時の治療は抗ウイルス剤の5日間服用です。
通常の治療は1日2回5日間の服用ですが、再発抑制療法の場合は1日1錠を毎日服用します。この治療法によりご自身がいつ再発するかもしれないという心配も減りますし、パートナーへの感染も減らすことができます。
2)皮膚炎、湿疹
- かゆくなる皮膚炎ですが、ひどくなると皮膚が切れて痛くなります。
- 早めにぬり薬で治療することが大切です。
陰部・外陰部のイボ:考えられる疾患と症状
1)尖圭コンジローマ
- ヒトパピローマウイルス(HPV: human papiloma virus)が性行為により陰部に感染し発症します。
- 潜伏期間は約3週間~8ヵ月(平均2.8ヵ月)と長いため感染源の同定は困難です。
- 本症からは主に低リスク型であるHPV6型あるいは11型が検出されます(子宮頸癌や陰茎癌との関連性が示唆されるHPV16型や18型は高リスク型に属しています)。
- イボは数ミリの小さいものが主ですが、多発します。放置するとカリフラワー状に大きくなる場合もあります。
- 主な治療法は液体窒素を用いた凍結治療とベセルナクリーム※2です。
- いずれも1回では完治せず複数回の治療が必要です。
- 見た目が良くなっても3ヵ月以内に約25%は再発するため継続した診察が必要です。
- 免疫力が下がると再発しやすいためストレスや疲れをためないようにして下さい。
※2ベセルナクリームを用いた尖圭コンジローマの治療
この薬をぬることでウイルスに対する自分の免疫力を高めて治療に導きます。
週3回、夜にぬり、朝洗い流します。1ヶ月程度続け効果を確認します。
副作用はぬった部位に赤みやびらんができる場合があります。自分の免疫反応が強まりすぎた結果ですから、我慢できる範囲であれば治療を継続します。
- この薬をぬることでウイルスに対する自分の免疫力を高めて治療に導きます。
- 週3回、夜にぬり、朝洗い流します。1ヶ月程度続け効果を確認します。
- 副作用はぬった部位に赤みやびらんができる場合があります。自分の免疫反応が強まりすぎた結果ですから、我慢できる範囲であれば治療を継続します。
2)陰茎真珠様小丘疹
- 冠状溝(くびれている所)に沿って1mm程のイボが多発する病気で、皮膚の中の線維が増えることで盛り上がります。
- 尖圭コンジローマと間違われることがありますが、生理的な変化なので治療は不要です。
3)フォアダイス状態
- 陰茎に1mm程の白っぽいイボが多発する病気で、皮膚の中の脂腺が増えることで盛り上がります。
- 尖圭コンジローマと間違われることがありますが、生理的な変化なので治療は不要です。
4)ボーエン様丘疹症
- 尖圭コンジローマと同じくHPVによる性感染症ですが、HPVの型が異なり、16型など高リスク型が関係しています。高リスク型のHPV16型や18型は子宮頸癌や陰茎癌との関連性が示唆されています。
- 少し黒っぽいイボで、尖圭コンジローマより大きい場合が多いですが見た目は区別が難しく、一部を切り取り病理検査を行います。
- 治療は尖圭コンジローマと同じですが、大きいものは手術で取り除きます。
- パートナーの子宮頸がん検診も必要です。
5)伝染性軟属腫(水いぼ)
- 子供に多い伝染性軟属腫ウイルスによる感染症です。
- 性行為で感染した場合は他の性病の検査も必要です。
- 麻酔のシールを1時間はった後にピンセットで摘出します。
6)扁平コンジローマ
- 梅毒の皮疹です。感染3ヶ月後に出てきます(梅毒2期疹)。
- 少し扁平に隆起した湿潤性の病変です。
- 梅毒は血液検査で翌日には結果が判明し、抗生物質で治せる病気です。
- 梅毒は他の皮膚病と見た目が他の病気と区別がつきにくい場合があります。そのため性行為による感染を心配している場合は必ず診察時に口頭で医師にお伝えください。
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梅毒は自然に病気が治る場合がありますが、治療をしないと進行し、まれですが後遺症などが残る場合があります。治療機会を逃さないようすることが肝腎です。
陰部・外陰部の傷、潰瘍:考えられる疾患と症状
1)梅毒
- 性行為で感染します。
- 性器にシコリや潰瘍ができるまで3週間かかります(梅毒1期疹)。
- このシコリや潰瘍は1ヵ月ぐらいで自然に改善します。改善しますが、治ったわけではなく、症状が出ないだけで徐々に病気は進行します。
- 3ヵ月ぐらい経つと扁平コンジローマ(上記参照)や陰部以外の皮ふに赤みが出現します(梅毒2期疹)。
- 梅毒は採血で簡単に診断できますが、梅毒の皮ふの症状は他の病気と区別がつきにくい場合があります。診察時に性行為感染を疑っていると医師にこっそりと告げて下さい。受付の時に問診票に書く必要もありません。
- 治療は抗生物質を飲むだけなので簡単です。
2)性器ヘルペス
- 最初は小さな水ぶくれができますが、すぐにやぶれて小さな傷になります。
- 詳細は上記を参照して下さい