疥癬(かいせん)
疥癬(かいせん)はこんな病気です
- 人の皮ふに寄生し卵を産むダニ(ヒトヒゼンダニ)による感染症です。
- 全身の皮ふに赤いブツブツが多数できる非常にかゆい病気です。ゆびの間、手や手首、わき、陰部に症状が現れるのが特徴です。
- 肌と肌が直接触れあうことで感染するだけでなく、寝具などを介しても感染します。
-
潜伏期間が1、2ヵ月あるので、接触後すぐに症状が出るわけではありません。
疥癬(かいせん)の治療法
イベルメクチンという飲み薬を使います。1回で効きますが、卵には効果がないので、卵が確実にかえる1週間後にもう1度投与を行います。
イベルメクチンは体重15kg以下の乳幼児、妊婦・授乳婦、肝障害のある方は使用できません。
かゆみに対しては飲み薬の抗アレルギー剤を併用します。
ぬり薬はオイラックスを使用します。イベルメクチンが使えない場合は、チアントール軟膏や安息香酸ベンジルオイラックス軟膏を使います。
同居家族は症状がなくても同時に治療を行う場合があるので、必ず診察に来て下さい。
疥癬(かいせん)の日常のケア
長時間患者さんと接触しないようにし、接触後はよく手を洗うようにして下さい。
タオルや寝具の共有は行わないようにして下さい。
日常生活の制限はありません。入浴も可能です。
登園や登校も問題ありません。病院や介護施設で勤務されている方は個別に相談が必要です。
洗濯や掃除は普段通りで構いません。ヒゼンダニはじゅうたんや畳で増えることはないので、部屋をきれいにしても予防にはなりません。
角化型疥癬はこの限りではありません。Q&Aを参考にして下さい。
Q&A
Q:ヒゼンダニはどんなダニですか?
A:大きさ0.4mmで肉眼ではほぼ見えません。メス成虫は交尾後皮ふの表面に横穴を掘り(疥癬トンネル)、卵を産み付けます。卵は3、4日でかえり、幼虫はトンネルを出て皮ふをはい回るようになります。成虫の寿命は4、6週です。なおヒゼンダニは吸血することはありません。
ダニは高熱や乾燥に弱く、50℃で10分間さらされると死ぬことがわかっています。また、皮ふから離れると数時間で感染力はなくなると推定されています。
Q:ヒゼンダニはどこでうつりますか?
A:同居の家族や介護している人からうつることが多いですが、当直室や休憩施設の寝具、こたつなどを介してもうつることもあります。介護施設などで集団で発生することもあり問題になっています。
Q:不潔にしていると疥癬になりやすいですか?
A:そんなことはありません。
Q:疥癬はどのように診断しますか?
A:ヒゼンダニのいそうな皮ふを取って顕微鏡で調べ、虫か卵がいることを確認します。最近はデルモスコープという拡大鏡を使うことで検出率が上がるようになっています。体にたくさん出ているブツブツの多くは虫や排泄物に対するアレルギー反応で生じていて、そこには虫がいないので、疥癬トンネルなど虫がいそうなところをねらう必要があります。
Q:イベルメクチンを2、3回使いましたが、まだかゆみが残ります。どうすればいいでしょうか。
A:疥癬のアレルギー反応が残っていたり(特に陰のう部)、元々乾燥肌による湿疹がある場合など理由はいろいろですが、治療後にかゆみが残ることをしばしば認めます。多くの場合、注意しながらステロイド外用剤を使用するとかゆみが減ることが多いので、ご相談下さい。
Q:他の皮ふ科でみてもらっていますが、よくなりません。疥癬でしょうか。
A:疥癬以外にも通常の治療で治りにくい皮ふ病があるので、一度診察させて頂く必要があります。その際に現在使っている薬を持ってきて頂ければ大変参考になります。なお、疥癬の診断は難しい場合があり、一般的な治療を数回行ってはじめて気付くこともあります。ご理解頂ければ幸いです。
Q:角化型疥癬(ノルウェー疥癬)とは何ですか?
A:同じヒゼンダニによる疥癬ですが、角化型疥癬はダニの数が著しく多く、1人に100万匹以上寄生しています。そのため感染力が非常に強く個室管理などが必要です。高齢者や免疫が低下した人、誤ってステロイド外用剤を使っていた場合などに発症します。日常ケアの方法は通常の疥癬と異なりますので、個別に対応いたします。